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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页

青空文庫

この女のひとこそは『智恵子抄』の智恵子であったのだ。

高村光太郎という類のない不思議な人間によって、みがき上げられた生きた彫刻智恵子を見たのは、ただの、この三度の面会だけであった。かれは父光雲像をきざみ、「紫朝の首」「男の首」「園田孝吉像」「裸婦」「今井邦子像」「牛」「腕」「松方正義像」「中野秀人の首」「東北の人」「大倉喜八郎像」「黄瀛の首」「黒田清輝像」「九代目団十郎」「河口慧海像」「木暮理太郎像」などを作り、最後に十和田湖公園功労者顕彰記念碑のため、裸像を製作した。だが、かれが生涯をかけて刻みに刻み上げた彫刻は、智恵子の生きのいのちであったのだ。夏の暑い夜半に光太郎は裸になって、おなじ裸の智恵子がかれの背中に乗って、お馬どうどう、ほら行けどうどうと、アトリエの板の間をぐるぐる廻って歩いた。愛情と性戯とがかくも幸福なひと夜をかれらに与えていた。「あなたはだんだんきれいになる」という詩に、(をんなが附属品をだんだん棄てると、どうしてこんなにきれいになるのか。年であらはれたあなたのからだは、無辺際を飛ぶ天の金属。見えも外聞もてんで歯のたたない、中身ばかりの清洌な生きものが、生きて動いてさつさつと意慾する。