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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页
嬉しく思った。
長き日の黙の久しさ 堪へ来つゝ、このさ夜なかに、一人もの言ふ
人も 馬も 道ゆきつかれ死にゝけり。旅寝かさなるほどの かそけさ
ひそかなる心をもりて をはりけむ。命のきはに、言ふこともなく
ゆきつきて 道にたふるゝ生き物のかそけき墓は、草つゝみたり
山岸に、昼を 地虫の鳴き満ちて、このしづけさに 身はつかれたり
この島に、われを見知れる人はあらず。やすしと思ふあゆみの さびしさ
静かなる ひと日なりけり。日ねもすに 心ねもごろのふみを 書きたり
あやまたずあらしめし かのをみな子も、かつ/″\ 我を 忘れゆきけむ
青空の うらさびしさや。麻布でら 霞むいらかを ゆびざしにけり
その日の帰りに、迢空は私を送るために山小屋から、雨でつぶれ川になった山道を一緒に下りた。真中が掘られた山道はがらがらの小石と泥で、飛び飛びにぬかるみを避けて歩かなければならなかった。
「あの男の歌は全部はったりですよ。はったりを取ったら何ものこりはしませんよ」
迢空はこの人には、まれに見る激しい口調でそう言い、心の憤りが足もとに勢いづいて、石を避けてがつがつ歩いたが、足もとが危なかった。