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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页

青空文庫

突然、裏町の角で懐中電燈の光がさっと迢空の顔を射りつけ、迢空はこの無礼な男と対い合った。この男は警察の者で不審訊問に引っかかったのだ。迢空は他人の顔を懐中電燈で照らす奴があるかと言ったが、刑事は君達は何処かで喧嘩でもして来て、怪我をしているのではないか、変な歩き方をしている、隠さずに言えと来た。一人は下駄を引き摺り、一人は極度の眼鏡のせいで道路が凸凹に見え、ひょろついて歩いているのだから、何処から見ても変な恰好に違いない。

迢空は名刺を帽子の裏側からつまみ出して、この無礼な男に渡した。この無礼な男は何々大学教授と書いた名刺を永い間懐中電燈の明りで見入ってから、こんな大学があったかな、ついおれは聞いたことがないと言って、更に疑義に堪えざるふうに言った。

「それにしても大学教授ともあろう人が、今頃晩のお菜を買いに出るということは可笑しいじゃないか。」

「大学教授だってお菜は買うさ。」

小谷恒は眼鏡をぴかっと光らせた。

迢空は眼鏡がこの場合役立ったと思った。二人とも眼鏡をかけていなかったら、もっと変な男に思われたかも判らない。

迢空はとにかくわしの家まで尾いて来て、人物をたしかめろ、と言い、刑事はのろのろと尾いて来た。