轻松读懂日语经典作品
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おうぎの
扇野
山本 周五郎
「面白倶楽部」大日本雄辯會講談社、1954(昭和29)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,727 字 · 67 页
彼は軽侮するように肩をすくめたが、眼はやはりぎらぎらしていた。
廻り縁からおけいが顔を覗かせた。角屋金右衛門の娘で、年は十八になる。愛嬌のあるまる顔で、おちょぼ口やよく動くいたずらっぽい眼もとに、まだ子供らしい感じが残っているが、五尺三寸ばかりある躯は、かたちよくのびのびと成熟して、なにげない動作にもしぜんと女らしい媚があらわれた。
「あの人なにか云いまして、三宅先生」おけいは座敷へ入って来ながら云った、「なにか失礼なことを云いましたでしょ、あの人」
栄三郎は黙って振向いた。おけいは坐って、両の袂を膝の上で重ね、心配そうな口ぶりとは反対に、陽気な眼つきで栄三郎を見た。
「もしそうだとしたら、ちっとも気になさることはございませんわ、あの人の頭の中には二つの事しきゃなくって、あとはただそのときばったりのでたらめを云うばかりなんですから、ほんと、あたしよく知っていますわ」
「それがそうでもないんだ」栄三郎はにがにがしげに云った、「そうでないどころか、私が不満に思っていたところをぴたりと云い当てたよ」
「あの人の頭の中にはね」とおけいが云った、「自分が御家老の息子だということと、女のことしか入っていませんの、そのほかの事はなんにも、それこそすっからかんのからっぽですわ」