轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

おうぎの

扇野

山本 周五郎

「面白倶楽部」大日本雄辯會講談社、1954(昭和29)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,727 字 · 67 页

青空文庫

二

栄三郎はおけいを見た。

「ほんと」とおけいは云った、「あの人は女さえ見れば自分のものにしたがるんです、三年まえに奥さんをもらってからでも、ちょっときれいな女の人を見ると、すぐに手を出したがるんですから、いつかなんてあたしにまでへんなことをしようとしたくらいですわ」

栄三郎は下絵のほうへ眼をやりながら、興もないというふうに呟いた。

「しかし、あの男の云ったことは本当だよ」

おけいは肩をすぼめた。

「私の迷っているところをずばりと云い当てた」と彼は続けた、「そこが定れば描きだせるんだが、どうもっていったらいいか見当がつかない、――ここからこの辺なんだ、ここからこの辺になにか足りないものがある、あの男は点ずべき睛がないと云やあがった」

「あたし失礼しますわ」おけいはそわそわと立った、「踊りのお稽古にゆくところでしたの、ほんと、おちゃぼが待っていますのよ、お邪魔を致しました」

栄三郎は、じっと下絵をにらんでいた。

二

六月はじめの午後、――よく晴れて暑い日だった。

座敷いっぱいにひろげた下絵を前に、栄三郎は気のぬけたような眼つきで坐っていた。石川孝之介が来た日から七日のあいだ、殆んど一日じゅうそんな恰好で坐りとおした。