轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
おうぎの
扇野
山本 周五郎
「面白倶楽部」大日本雄辯會講談社、1954(昭和29)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,727 字 · 67 页
四
生きているなら会いたい。そうして、縁を切った本当の理由がどうであろうと、自分は弟子としてできるだけ師の面倒をみてゆきたい。そんなおもいが、うら悲しい旅の唄を聞きながら、新しく彼の胸を緊めつけるのであった。
「お盃があいておりますけれど」と彼のすぐ脇で声がした、「お一ついかがですか」
栄三郎はそっちへ振向いた。いま来たばかりらしい、二十四五になる芸妓が、燗徳利を持ってにっと頬笑みかけていた。上背のあるすらっとした躯つきで、色が白く、透きとおるように薄い肌をしていた。顔はやや角ばったおもながで、表情の多い小さな眼と、少ししゃがれた(切り口上の)言葉つきに特徴があった。
「よう――」と彼は盃を持った、「暑いところを御苦労さまだな」
四
ふしぎな感動である。その芸妓の顔を見、その小さな(口よりもよくものを云う)表情の多い眼を見たとたん、栄三郎はぐんと心をひきよせられた。彼女の顔だちは、これまでに知っているどの女とも似かよってはいない、動作も口ぶりも同様であるのに、いきなり心と心がぴったりとより合うように感じられた。
「一つ受けてもらおう」栄三郎は盃をさしながら云った、「もし飲めるのならね」