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しんどうま

振動魔

海野 十三

「新青年」博文館、1931(昭和6)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,354 字 · 34 页

青空文庫

そうするとこの缶は形の割合には大きい音をたてて、グワーンと、やや暫くは鳴り響いているだろう。強く叩けば更に大きい音響を発する。しかしその音色は、いつも同じものである。それというのが、こうした箱や壺めいたものには、その寸法からきまるところの振動数というのがタッタ一つきりあるので、一体振動数というのは音色そのものに外ならないものだから、それで同じ器を叩けば、音の大小はあっても、音色はいつも同じなのである。

そこで、もう一つのドロップの空き缶をとりあげて、前と同じように、糸でとめて、ぶら下げて置く、その上で、最初の缶を思いきり強く叩くのである。するとたちまち大きい音がするであろうが、音がした上で、手でもってその缶を握って振動を止めるのである。そのとき耳を澄ませて聴くならばいま叩いた缶は手でおさえて振動をとどめたにも拘らず、それと同じような音色の音が、かなり強くきこえるではないか。はて、その音は、何処で鳴っているのだろうか。

よく気をつけてみるなれば、あとから糸をつけて釣るした叩きもしないドロップの缶が、自然にグワーンと鳴っているのである。これを共鳴現象というが、二つある振動体が同じ振動数をもっているときには、一方を叩くと振動が空中をつたわって他のものを刺戟することとなる。