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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页

青空文庫

鳩ぽっぽ鳩ぽっぽと云う唄が出来るかも知れないな。

皆で仲よく飛んでこいって云う唄が流行るかも知れないな。

湯から帰えりしな、暗い路地で松田さんに会う、私は沈黙って通り抜けた。

十二月×日

「何も変な風に義理立てしないで、松田さんが、折角借して上げると云うのに、お芙美さんも借りたらいゝじゃないの、実さい私の家は、あんた達の間代を当にしているんですから。」

髪の薄い叔母さんの顔を見ていると、おん出てしまいたい程、くやしくなる。

これが出掛けの戦争だ。急いで根津の通りへ出ると、松田さんが、酒屋のポストの傍で、ハガキを入れながら私を待っていた。

ニコニコして本当に好人物なのに、私はムカムカしてしまう。

「何も云わないで借りて下さい。僕はあげてもいゝんですが、貴女がこだわると困るから……。」

塵紙にこまかく包んだ金を私の帯の間にはさもうとした、私は肩上げのとってない昔の羽織を気にしながら、妙にてれくさくなってふりほどいて電車に乗ってしまった。

どこへ行く当てもない。

正反対の電車に乗ってしまった私は、白々とした上野にしょんぼり自分の影をふんで降りた。

どうしよう。