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しゃよう
斜陽
「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页
あなたは、いかがです。私は結局、ひとりで考えて、ひとりで行動するより他は無いのだ、と思うと、涙が出て来ます。生れて初めての、ことなのですから。この、むずかしいことを、周囲のみんなから祝福されてしとげる法はないものかしら、とひどくややこしい代数の因数分解か何かの答案を考えるように、思いをこらして、どこかに一箇所、ぱらぱらと綺麗に解きほぐれる糸口があるような気持がして来て、急に陽気になったりなんかしているのです。
けれども、かんじんのM・Cのほうで、私をどう思っていらっしゃるのか。それを考えると、しょげてしまいます。謂わば、私は、押しかけ、………なんというのかしら、押しかけ女房といってもいけないし、押しかけ愛人、とでもいおうかしら、そんなものなのですから、M・Cのほうでどうしても、いやだといったら、それっきり。だから、あなたにお願いします。どうか、あのお方に、あなたからきいてみて下さい。六年前の或る日、私の胸に幽かな淡い虹がかかって、それは恋でも愛でもなかったけれども、年月の経つほど、その虹はあざやかに色彩の濃さを増して来て、私はいままで一度も、それを見失った事はございませんでした。