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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

11 第十一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页

青空文庫

「そうだ。たれがよいか」

阿部、内藤、松平の人々は座を見まわして、

「やはり、井伊どのが、よくあるまいか。平八郎どのも、ご一しょに」

「よし、申して来よう」

本多平八郎と井伊兵部のふたりが、代表となって、そこを出たときである。

「長島の信雄卿から、ふたりのお使者が、ただ今、お表の大書院へ通られました」

と、かれらの部下が、わざわざここへ知らせて来た。

「なに。長島の使者が、やって来たと?」

これがまた、人々の憤懣を、さらに沸騰させた。

「どんな面をさげて――」

「のめのめと」

と、罵りやまない。

しかし、大書院へ通されたとあれば、すでに使者を引いて、家康が面接しているものと思われるし、かたがたその主君の意志も表明されるであろうと、人々は、なだめ合って、その結果を待つことにしていた。

信雄の使者は――信雄の叔父、織田越中守信照と、生駒八右衛門のふたりだった。

信雄の意中はともかく、こう二人は、さすがに、使いとして、徳川家へ臨むのも、気まりが悪そうに、大書院の席に、ひどく萎縮して、控えていた。

やがて、家康は、小姓だけをつれて――具足なしの平服で、さっさと、気がるにあらわれた。