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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
11 第十一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页
雪の迷路
能登の七尾からも、すでに前田安勝や、高畠定吉などが、数千をひっさげて、駈けつけて来たので、いまや前田方の総兵力は、一万をこえていた。
さきに、同じ海沿い街道をなだれて行った佐々成政は、津幡の近くに来ると、
「よし、津幡を奪れ」
と、すぐそこを窺った。
かれの軍には、一貫した目標も軌道もない。さながら不連続線の雲に似ていた。
雪の迷路
津幡を留守していた城中の将士は、末森方面から、にわかに逆転して来た佐々勢の怒濤を認め、すわと、洪水を見たように騒ぎたった。
咄嗟の気転で、城中の森、うしろの山、いたる所に、ありったけの旌旗を立てて、気勢を示した。
ここは、末森以上の嶮城だ。――成政は、遠くから眺めて、
「めったに、寄るな」
と、さきの敗北にこりて、ひどく要心した。
「察するに、ここは金沢への街道の要害。少なからぬ兵力をこめてあるにちがいない。附近を焼きたて、鳥越城へ行け」
と、命令をあらためた。
町家の一部や、加茂神社などへ放火して、成政は、ついにここへかからずに、また北転して、津幡と倶利伽羅との中間――鳥越城へ進路をとった。
ここは三国山の南、倶利伽羅の西、どっちを望んでも、山また山の山城である。