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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

11 第十一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页

青空文庫

「まず、一段落」

と、ここで秀吉は、いささか意を休めた。しかし、縄生の滞陣は、どうしても、越年にかかるであろうと思われ、留守をしている大坂表のものたちへも便りを出し、冬をむかえる用意をしていた。

いうまでもなく、秀吉の対象は、初めから、信雄ではなく、家康である。対家康の解決を見ぬうちは、時局は平定したとはいえないし、かれの意図もまだその半ばにあるにちがいない。

「ちかごろ、御健康はどうですか」

一日、桑名の城へ、秀吉が訪ねた折、よも山の話のあとで、かれがたずねた。

「いや、健やかだよ。何よりは、いやな思いもなく、戦陣の過労も癒え、すっかり心がらくになったからの」

信雄は、明るく、笑ってみせた。秀吉は、馴れついて来る子を、膝へ抱きとるように、何度もうなずいた。

「おう、おう、お心にもない一頃の戦には、さこそ、お心を労われたことでおざろう。したが、まだ少々、御苦労事が残っておりますな」

「はて。……なにがじゃ、筑前」

「徳川どのを、あのままにおいては、いつまた、お煩いをかけるや知れますまい」

「そうの。……伯耆守を使いによこして、めでたいと、祝うてはよこしたが」