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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
11 第十一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页
……さすれば、佐々成政が、この城へかかる前から、いかに、われらが味方への聯絡を、怖れていたか、重視してかかったか、分るであろう」
「ご尤もにござります。しかし、能わぬまでも、万が一、敵の目をかすめて、お使いが効をあらわせば」
「よせよせ。あたら健気な勇士の一命を、むざむざ、捨てさせるは、勿体ない。かまえて、次の使いは、無用だぞ」
「では、このまま、お城をまくらに、討死のお覚悟ですかの」
「何も、死ぬのを、急ぐことはない。悔いなきまでの、全力をつくし、それでも落城のほかなければ、それまでのことよ」
「ああ、籠城のお考えなら、何で昨日、あのように多くの領民を、城中へお入れなされましたか。穀倉の兵糧も、ようやく二十日をしのぐほどしかございませぬ。それを、あの夥しい領民どもにむざむざと食わせては」
「老人、食物の泣き言はみっともないぞ。一椀の物は、半分ずつ分けて食おう。十日の物は、十五日に食いのばして戦おう。領主、老臣ともなれば、かかる日に、あわれな無辜の者たちの生命を、守ってやるのが、武門の任というものではないか。おぬしや、おれたちはまだよいが、無慙なのは、同じ武門に生れた若者たちこそいたましい。