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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

11 第十一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页

青空文庫

利家は、末森を立って、津幡まで帰って来たが、その途上で、鳥越城の不始末を聞き、目賀田又右衛門の怯懦を大いに怒って、

「武門の不名誉、前田の名折れ。すぐ、鳥越へ寄せて、奪り返さねばならぬ」

と、令を発しかけたが、村井長頼や、一族の諫めに、不快を胸にのんで、十三日の夕、ひとまず金沢表に凱旋した。

後日。

この目賀田又右衛門には、余談がある。

秀吉の聚落の第に、蒲生飛騨守、浅野弾正などが寄りあっていたとき、前田家の徳山五兵衛と斎藤刑部の二人がそこへまかり出て、

(実は先年、越中お取合いのせつ、鳥越城を空巣にして逃げ落ち、大いに面目を失うて、きょうまで姿をかくしていた目賀田又右衛門なる者がございまする。……その折の不覚を、当人も心から慚愧しており、頭を剃って、お咄し衆としてでも、何とかもういちど、前田家へ帰参はかなうまいかと、一生の願いといたしております。ついては、大納言様(利家)へ、おふた方から、折入っておとりなしの儀を仰げますまいか)

と、旧友の誼みもあればと、切に、頼み入れたのであった。

飛騨守と弾正は、さっそく利家に会って、

(又右衛門も、さんざん物笑いにされ、頭まで剃ってというのだから、ひとつ御堪忍して、茶堂か、咄し衆の中へでも、抱えおかれてはどうでござる)