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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

11 第十一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页

青空文庫

「いやお寒いことであったろう。越路の山や大雪をわけて、真冬を遠くおいであるなど、ひと通りなことではおわさぬ。山国衆は、総じて、酒量も人一倍とうけたまわる。さあ、おくつろいで」

と、打ち解けていう。

だが成政は、いつもの剛骨な風を、くずさなかった。かかる馳走になりに来たのではない――とするような態度すら見せて、

「時に……」

と、杯を下におき、接待役の近衆小姓たちを見まわして――

「酒は、酒豪といわるるほど好きでござるが、いただく前に、ちと御内談な申したいが」

と、人払いを求めた。

そして、家康とただ二人きりになると、成政は、ひと膝すすめて、さきに書面でも申し上げておいたが、小牧の戦況は如何、また今後の方略はどう進めてゆく計画か。しかと、御意中をきいておきたい――と改まった。

「…………」

家康は、微酔して、まっ赤になった顔を、黙然と垂れて、かれのいうがままを、いわせていた。

成政は、その精力的な体を、両肱に誇張して、頭の粗雑を舌で補ってゆくような雄弁で、日頃の抱懐を、呶々と、云いまくした。

「ひそかに、拙者は、北越の謙信をもって任じ、徳川どのは、まさに当代の信玄にも比すべき人物と信じておるんじゃ。