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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
11 第十一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页
積善寺の砦へかかった細川忠興、蒲生氏郷らの軍勢は、一日にして、そこを叩きつぶし、千石堀を攻めた秀吉の甥、秀次も、去年、長久手の合戦に蒙った汚名を、この時ここに雪がんものと――必死にかかって、またたくまに、これを陥した。
浜城をつつんだ高山右近長房や、中川藤兵衛の軍も、火箭、鉄砲の豊富な新兵器の威力をつくし、忽ち、そこを焦土とした。
――すでに、別動隊の堀秀政、筒井定次、長谷川秀一などは、一乗山根来寺の本拠を襲っていた。
秀吉の本軍もそこにあった。
多くの僧兵を養い、武器火薬を蓄蔵し、いわゆる“根来衆”“根来法師”の名をもって、かれらが世間乱流の中に暴力をほしいままにして来たことは、世上周知のことだった。
いまや、その巣窟の上に、裁決の日は来た。一山の僧房や伽藍は、わずか伝法院の一宇を残したきりで、炎々たる兵燹に罹った。
衆徒らは、四散し、かれらが待っていた呼応の武門も、援けに来るいとまもなかった。秀吉の祐筆、大村由己は、その日の記を誌していう。
一乗山根来寺ハ、開山上人、伝法院ノ建立以来、専ラ近隣ト闘争シ、弓矢ヲ取ルヲ寺法トナス、六百年来、富ヲ恣ニシ、強敵ニ向フナク、小敵ヲ蔑ミ、趣キ井蛙ノ誇ニ似タリ。