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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
11 第十一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页
――というよりも、いまだに甘い考えから脱けない信雄にたいして、或る戒告と将来のために、
(少し困らせておかねばクセになる)
という意識的だったに相違ない。
けれど、信雄は、困惑の次に、畏怖をおぼえた。
「もう深夜です。明朝また伺って、ともあれ、お指図を仰ぎましょう」
そわそわと、辞去して、営門の外へ帰りかけたが、ふと思いついて、前田利家の幕舎へ立ち寄り、ありのままをはなして、
「どうしたものであろう。すでに剃髪して、予の所へ、命乞いに来た成政を、見殺しにするも不愍だし……」
と、嘆息して、暗に、利家の助言を求めた。
利家には、秀吉の肚が、すぐ読めていた。――で、自分も共に、成政が助命となるように協力しようと、約して別れた。
そのせいか、翌日、信雄の陣所へ、石田佐吉が使いに来て、
「せっかくの御配慮ではあるし、殊に、前田殿には、年来の敵たる宿怨もわすれて、切に内蔵助成政の一命を助けたまわれと、今早朝から、筑前様へ、熱心なおとりなしでござった。……為に、前田殿のお顔をたてられて、一命のみは、宥してとらせんとの、仰せでござる。……後刻、成政どのを、御営所まで、お曳きつれ下さるように」