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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
11 第十一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页
石田、浅野、増田の三名は、自余の一般内務を奉行し、重要問題は、五奉行の合議によって、分別を一決し、諸政、簡潔と敏活を旨とする。
――そしてこの五奉行にたいして、べつに三ヵ条の誓約が掲げられた。
第一、威権をふるい、えこ贔屓のないこと。
第二、宿怨、私謀をいだかぬこと。
第三、金銀を蓄え過ぎ、酒宴、遊興、女色、美食、すべて過ぎぬこと。
職掌も、誓約も、実に単純である。が、多分に、その使命の重要性は、一にその人間への信頼に委ねられているものだった。
後の、醍醐、桃山、慶長にわたる一世代のらんまんたる文化の興隆に、これら五奉行の文官的な功績が、他の武将の武勲に劣るものでなかったことはいうまでもない。――短くはあったが、かの信長の一生には、その緒も見られなかった文治文化面の施策を秀吉は経綸の一歩として、この忙しい天正十三年のまっただ中で、すでに着手していたのであった。
こういう秀吉。こういう大坂城を中心とする内外のうごき。――そして、こういう天正十三年というただならぬ世代の日一日を、その後の徳川家康は、果たして、どんな構想と心境をもって過していたろうか。
転じて、家康を観ることは、また秀吉の眼孔の底を覗くことでもある。