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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
11 第十一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,659 字 · 372 页
茶々は、ことし十八。二の姫は十四、末姫は十二歳になる。
かの女たちは、去年、北ノ庄の落城の日、養父の柴田勝家や、実母のお市の方が世を去る煙をうしろに見て、北越の陣中からこの大坂へ移され、西を見ても東を見ても知らぬ者ばかりの中で、ひと頃は、夜も日も泣きはれた眼をしていて、笑いざかりの妙齢を、笑顔一つ見せなかったものだが、いつか城中の人々にも馴つき、秀吉のらいらくな調子にもアヤされ、三人の姫はみな、秀吉を、
(おもしろい小父さま)
として、すっかり、慕いきっている。
きょうも、その、おもしろい小父さまは、能役者たちの狂言が幾番かすむと、やおら自身、楽屋幕のうちへはいり込んで、やがて、扮装して、舞台へ出て来た。
「あら。……小父さまが」
「まあ。あんな、ひょうげたお姿をして」
と、二の姫や、末姫は、あたりもわすれて、手をたたいたり、指さしたり、笑い興じて、やまなかった。
さすがに、姉姫の茶々は、もうはじらいを知りそめて、
「指さしたりしてはいけません。しずかに、拝見していらっしゃい」
と、妹たちをたしなめ、強いて、つつましく在ろうとしていたが、秀吉の猿若振りが、あまりにも、道化ていて、自然な滑稽をかもし出すので、果ては、茶々も、袂を唇にあてて、お腹がいたいように笑っていた。