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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
10 第十分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 页
「その儀は、わけて御念を入れられてのおさしずとて、充分に触れを達し、また使いも立て、毛利への固めは万ぬかりございませぬ」
「泉州岸和田の孫兵次(中村一氏)へ、これも念のため、黒田官兵衛、生駒甚助、明石与四郎などの手勢六、七千を加勢として送りつけておくことも」
「は。てまえのおる間に、即日、加勢衆、岸和田へ向いました」
「よしよし」
と、秀吉はそこで、薄茶を一わん、うまそうにのんで、
「母上も、ごきげんか……」
と、ひとみを静かにした。
老母はすでに七十四である。妻の寧子も四十に近い。一日家をあけても、妻はともあれ、老母は年が年なので、心にかかるものらしい。
「はい。おかわりなくいらせられました。御母堂さまには、かえって、戦の忙しさに、殿が不養生はしておらぬやと、殿のお身の方をお案じなされておいででした」
「また、あの子は灸をすえおるかと、訊かれたことであろ」
佐吉は笑って、その通りです、と答えた。
他を遠ざけて、ふたりだけの対座に、こう笑い声の出たはずみに、秀吉はまた、ふと、
「茶々は? ……。茶々たちも、元気ようしていたか」
と、たずねた。
「は、あの、お三方の姫さまたちで」