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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
10 第十分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 页
滝川三郎兵衛が、お許をだましたのは、憎い仕方じゃが、それも老母の身を思うての余りであろ。……お許が情にほだされて、義をもってなしたこと。大きな科ではあろうが、この母は、何とも悔いてはおりませぬぞ」
「思慮なき子、祖先以来の家名を今日、ついに滅ぼすに至りました。大不孝、おゆるし下さいませ」
「何の何の、御先祖さまには、まことに相すまぬが、義において、情において、いささかお慰め申しうる道は立つ。義といえ、情といえ、これもさむらいの美しさじゃもの。……不義無道で家を滅ぼすのとはわけがちがう」
「そう仰せ下さいまして、甚内もどれほど快く死ねるかも知れませぬ。ついては、郎党どもは元より連れて参りますが、不愍な女わらべや老僕どもは、ただ今みな、暇をつかわして、それぞれ郷里へ帰しとうございますが」
「それがよかろ。母の身は、お案じめさるなよ」
「母上には、妻ひとりを、お側において立ちまする。やがて、戦場にて、甚内死せりとお聞き遊ばしましたら、筑前様にお伺いをたてて、御余生に入らるるとも、罪をおまち遊ばすとも、御主君の思し召しどおりになされて下さいまし」
「オオ、おお、そなたのいうように致しましょう。