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しんさいゆうき

新西遊記

久生 十蘭

「別冊文藝春秋 第十九号新春小説集」1950(昭和25)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,654 字 · 52 页

青空文庫

と旅行記に書いている。ラマ教徒の手に入った残酷技術の花々しさを証明するものは拷訊と刑統で、律書できめられた重罪は七十二条、これにたいする刑統(刑の種類)は千八百八十六条という豊富さである。

「ラマ教徒の残虐の熱愛と狂信が思いつかせた拷問と刑罰は、技術の繊細巧緻と創意のすばらしい点で、人類の歴史に残るすべての方法を凌駕し、トルケマダ(天才的な拷問の方法を案出した西班牙の宗教裁判判事)やアルベ(和蘭の叛乱者裁判で前例のない残酷な処刑を行なった)も及ばないような完璧さを示している。

一例をあげると、それはこんなふうにやられる。西蔵の律法はすべて連坐法(子が罪を犯せば、その父も、父が罪を犯せば、その子も同罪になる)によるので、父と子、夫と妻がいっしょに刑場へ出てくるが、刑僧はまず二人に大きなヤットコを示し、これから歯抜きの刑を行なうと宣告する。そうしておいて、剃刀で二人の髪を剃りはじめる。受刑者には歯抜きの刑に頭を剃るというのは、どういうことなのか理解できないが、間もなく、西蔵の刑術はおどろくほど洗練されたものだということを知るようになる。頭を剃り終ると、刑僧がヤットコを受刑者の一人に渡し、父に子の歯を、子に父の歯を、というぐあいに交互に抜かせる。