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にほんのでんせつ

日本の伝説

柳田 国男

「日本神話伝説集」日本児童文庫、アルス、1929(昭和4)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,931 字 · 207 页

青空文庫

それ故にお姿も若々しく、決して婆さまなどに化けて来られる神ではなかったのです。それを一つにしてこの大西家の先祖の人は、まぼろしに見たのであります。前から姥の神の後には児の神のあることを、知っていた為であろうと思います。(紀伊続風土記。和歌山県那賀郡岩出町備前)

伊勢の丹生村は古くから鉛の産地ですが、そこには名の聞えた鉱泉が一つあります。近頃ではいろいろの病気の者が入浴に来るようになりましたが、昔はただこの地方の女たちが、お産の前後に来て垢離を取り生れ子の安全をお祈りするところであった為に泉の名を子安の井といい、やはり弘法大師の加持水だという伝説をもっていました。戦国時代にはこの土地が荒れてしまって、井戸も半分は埋もれ、そういういい伝えを忘れた人が多くなり、近所の百姓たちがその水を普通の飲料に使う者もありましたが、そういう家ではどうも病人が多く、中には死に絶えてしまった家さえあったので、驚いて御鬮を引いて明神様の神意を伺ったそうです。実際は水に鉛の気があって、それで飲む者を害したのかも知れませんが、昔の人はそうは思わなかったのであります。それで御鬮の表には、子安井は産前産後の女のために、子育てを助け守りたもうべき深い思し召しのある井戸だから、早く浚えて清くせよと出たので、それからはいよいよこれを日用のため