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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页

青空文庫

その商人の噂もそのうちに伝わって来た。町の女小供は恐れてますます夜歩きをしなくなった。小商人の噂があってから十日ばかりしてのこと、馬方の一人が米屋から頼まれて馬で米を持って往き、その帰途に酒を飲んで夜遅く帰って裏町を通っていると、すぐ傍の竹垣の処から白い衣服を着た物がひらひらと出て来て、隻手でその胸倉を掴んだ。馬方がびっくりして見ると、その顔から長い大きな舌がだらりと垂れていた。

馬方は腰を抜かして馬の手綱を持ったなり其処へつくばってしまった。そして、やっと正気になって家へ帰ってみると、落したのか財布が無くなっていた。

白い衣服を着て長い大きな舌を出している幽霊の噂はますます評判になった。日々餅を売りに往っている男があって、ある晩遅くなって隣村から帰っていた。月の明るい晩であったが、餅屋はその比評判の幽霊の噂を思いだして、恐る恐る歩いていた。

小さな雑木の生えた丘に来た。その丘の上には畠があって大根のような物が見えていた。餅屋はその丘をあがりつめて畠の隅にある肥料小屋の傍まで往ったところで、不意に眼の前へ白い衣服を着た物が跳んで来て、襟元にその手をかけた。