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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页

青空文庫

と、主翁は澄まして云った。

「まだ、そんなことを云いやがる」と、云って小八は起ちあがろうとした。

老人は小八を制した。

「お前の方に証人があれば、それを伴れて来るが好い」

小八は出て往って彼の女を伴れて来た。

「家主さん、これがその騙りの家に抱えられて、亡者をやっていた奴でさあ、これがいっち証拠だ」

老人は女に向って云った。

「お前さんは、この御主翁に抱えられて、亡者をやっていなさったかな」

「はい、私は一生を五十両に売られて、亡者になっておりました」と、女は主翁に顔を反けて云った。

「……どうだな、御主翁」と、老人は主翁の顔を見た。

「皆、嘘ばかりじゃ、ありゃあ小八さんと云いあわして、云っていることじゃ」と、主翁は冷やかに云った。

五

亡者宿の主翁と小八の紛争は、家主では解決が着かないようになったので、遂に町奉行所へ持ちだした。

奉行の某は関係人一同を呼びだして調べにかかった。亡者宿の主翁は飽くまでも亡者のことは知らないと云いはった。

奉行は笑いながら云った。

「立山の麓に亡者宿と云うものがあって、足の在る幽霊を家に抱えて、客の好みによって見せると云うことは、今はじめて聞いたことではない、吾等の近づきにも、その幽霊を見たと云う者があるが、それでもその方は知らぬと申すか」