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しょうわよねんのぶんだんのがいかん

昭和四年の文壇の概観

平林 初之輔

「新潮 第二六年第一二号」1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,557 字 · 29 页

青空文庫

八 モダニズム全盛

彼は工場労働者の闘争的生活を、実にたんねんに描写している。彼の功績は、今までのところでは、従来文学作品の中にあまり現れなかった工業労働者の生活を微細に描写したということにあって、まだそれ以上には何物も示していないといってよかろう。

小林といい、岩藤といい、テクニックの上では、ブルジョア文学の遺産を踏襲する以外に、むろん何物をも付加してはいない。だがプロレタリア文学は、まだ当分、いかに描いたかよりも、何を描いたかの方を主として検査され、評価されねばならぬであろう。内容の偏重は、勃興の途上にある文学には避けがたいことだ。

八 モダニズム全盛

マルキシズムが生産階級の前衛のイデオロギーであるとすれば、モダニズムは消費階級の前衛的イデオロギーである。すなわちこれは近代化された享楽主義である。

この傾向は、カフェとダンスホールの増加に正比例して、今年にはいってから、ますます知識階級を中心とする消費者階級に全盛の勢いを見せている。したがってそれが文学作品に反映するのは無理もない。

モダニズムは、同じく消費者的イデオロギーであっても、センチメンタリズムともデカダニズムともちがい、むしろこれらのものと対立する。