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ちえのいちたろう

智恵の一太郎

江戸川 乱歩

象の鼻「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年1月<br>消えた足跡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年2月<br>智恵の火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年3月<br>名探偵「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年4月<br>空中曲芸師「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年5月<br>針の穴「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年6月<br>お雛様の花びん「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年7月<br>幼虫の曲芸「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年8月<br>冷たい火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年9月<br>魔法眼鏡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年10月<br>月とゴム風船「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年11月<br>兎とカタツムリ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年12月<br>白と黒「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年1月<br>風のふしぎ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年4月<br>飛行機を生み出すたのもしい力「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年7月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 页

青空文庫

「へえ、歩いて行ったんだって? でも、足あとがないじゃないか」

「足あとはないけれども、歩いて行ったんだよ。君、あすこをごらん。雪の上にポツポツと小さな穴があいているだろう。あれはなんだと思う?」

それはさしわたし三センチほどの小さな穴が、たびはだしの足あとがとだえているへんから、七十センチぐらいの間をおいて、ポツポツとむこうの大通りまでつづいているのです。

「雪の上に石を投げた穴みたいだね。それとも、棒の先でつついたのかしら」

木村君という少年が、小首をかしげていいました。

「アハハハ……、棒でつついたんだって? じゃ誰がその棒を持っていたんだい。その人の足あとがないじゃないか」

北川君が、こういって木村君の考えをうちけしました。すると今度は、一太郎少年が、妙なことをいい出しました。

「北川君、君の方がまちがっているよ。あれは、やっぱり棒でつついた穴なんだよ」

「えっ、なんだって? それじゃ君は、棒がひとりで動きまわったっていうのかい」

北川少年はあっけにとられて聞き返しました。

「そうじゃないよ。人が動かしたんだよ。君は、それじゃその人の足あとがつくはずだっていうのだろう。