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ちえのいちたろう

智恵の一太郎

江戸川 乱歩

象の鼻「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年1月<br>消えた足跡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年2月<br>智恵の火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年3月<br>名探偵「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年4月<br>空中曲芸師「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年5月<br>針の穴「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年6月<br>お雛様の花びん「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年7月<br>幼虫の曲芸「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年8月<br>冷たい火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年9月<br>魔法眼鏡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年10月<br>月とゴム風船「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年11月<br>兎とカタツムリ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年12月<br>白と黒「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年1月<br>風のふしぎ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年4月<br>飛行機を生み出すたのもしい力「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年7月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 页

青空文庫

みんながいなくなるのを待って、一太郎君は、一方のポケットから、ハンケチに包んだ細長いものを、だいじそうに取出しました。ハンケチをひらくと、中から、妙子ちゃんの筆入のふたが出てきました。

一太郎君はその筆入のふたの裏がわに、ハーッと息をかけて、拡大鏡でしばらくのぞきこんでから、今度は、前の窓ガラスに、ハーッハーッと、いくども息をふきかけて、六人のお友だちの残して行った指のあとを、一つ一つ見くらべていましたが、やがて、

「あ、これだ、これだ、すっかり同じだ。やっぱりそうなんだ。妙子ちゃんを助けてくれたのは、北村君だったんだ」

とうれしそうにつぶやきました。

皆さん、もうおわかりでしょう。昨日妙子ちゃんがころんだ時、カバンの中から筆入がとび出して、中のクレヨンが地面にちらまかれたのを、ひろい集めてくれましたね。その時の指のあとが、すべすべしたセルロイドの筆入に残っていたのです。

筆入のふたの表と裏には、妙子ちゃんのらしい小さい指のあとが、たくさんついていましたが、それとは別に、すこし大きい指のあとがいくつか残っていたのです。そして、ふたの裏がわに一ばんハッキリ残っていたのは、その生徒がふたをつかんだ時の、親指のあとにちがいないように思われたのです。