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ちえのいちたろう

智恵の一太郎

江戸川 乱歩

象の鼻「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年1月<br>消えた足跡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年2月<br>智恵の火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年3月<br>名探偵「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年4月<br>空中曲芸師「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年5月<br>針の穴「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年6月<br>お雛様の花びん「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年7月<br>幼虫の曲芸「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年8月<br>冷たい火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年9月<br>魔法眼鏡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年10月<br>月とゴム風船「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年11月<br>兎とカタツムリ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年12月<br>白と黒「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年1月<br>風のふしぎ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年4月<br>飛行機を生み出すたのもしい力「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年7月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 页

青空文庫

君、知ってるかい。象におせんべいを投げてやるだろう。そのおせんべいが、象の鼻のとどかない所へおちると、象はどうしておせんべいを取るか知ってるかい。僕、いつか見たんだ。象はね、おせんべいの向こうの壁に、鼻でフーッと息をふきつけるんだよ。そうすると、その息の風が壁にあたって、こちらへかえってくるだろう。象の鼻の息ってすごいよ。だから、おせんべいがこちらの方へ、コロコロところがるのさ。象のやつすました顔でころがって来たおせんべいを、鼻でつまんで、口の中へ入れるんだよ」

「そうかい、さすがは智恵の一太郎だね。僕、知らなかったよ。で、それがどうしたのさ。ここには象なんていないじゃないか」

「だから、象の鼻のかわりになるものを考えてみたのさ。なんでもないんだよ。ホラこれさ」

一太郎君は、そういって、足もとの地面をゆびさしました。でも、良雄君には、まだわからないのです。

「なんにもないじゃないか。石がころがっているばかりじゃないか」

「だから、この石なんだよ。見ててごらん。君はきっと、なーんだ、そんなことかっていうにきまっているよ。ほら、あすこに木ぎれが浮いてるだろう。