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ちえのいちたろう
智恵の一太郎
江戸川 乱歩
象の鼻「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年1月<br>消えた足跡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年2月<br>智恵の火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年3月<br>名探偵「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年4月<br>空中曲芸師「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年5月<br>針の穴「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年6月<br>お雛様の花びん「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年7月<br>幼虫の曲芸「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年8月<br>冷たい火「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年9月<br>魔法眼鏡「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年10月<br>月とゴム風船「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年11月<br>兎とカタツムリ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1942(昭和17)年12月<br>白と黒「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年1月<br>風のふしぎ「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年4月<br>飛行機を生み出すたのもしい力「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1943(昭和18)年7月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 页
「うまい。じつにうまい答え方だ。さすが智恵の一太郎君だ。大人だって、それほどには答えられないかも知れん。
五十糎の筒の先のところではかれば、月ははじめから米つぶぐらいなんだ。しかし、まさかそんなに小さいとは思わないものだから、筒の直径の広い間は、五十銭玉ぐらいに見えたり、五銭玉ぐらいに見えたりするんだよ。
考えてみれば、ほんとうになんでもないことだ。しかし、この紙筒をのぞかされた時には、君はびっくりしただろう。びっくりしなくてはいけないのだ。学者や発明家などの大きな仕事も、やっぱりそういう所から出発するんだよ。まず驚くことが大切なんだ。ふつうの人は見のがしてしまうような、ちょっとしたことを、よく注意して、びっくりしなくちゃいけない。それから考えるんだ。どうしてこんなふしぎなことがおこるんだろうとよく考えるんだ。それがほんとうの学問というものだよ。
君は今夜はみごとに及第だ。しかし、月の話はまだあるんだよ。今夜のよりは、もっとふしぎな実験が、まだ残っているんだよ。明日でもいい、明後日でもいい、二三日のうちに、よく空の晴れた夕方、ちょうど日のくれる時分、五時半ごろだね、またやって来たまえ。