轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

さくらのみのじゅくするとき

桜の実の熟する時

島崎 藤村

「文章世界」1913(大正2)年1~2月、1914(大正3)年5月~1918(大正7)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,569 字 · 222 页

青空文庫

書架で囲われた明るい窓のところには小さな机が置いてある。そこへも捨吉は好きな書籍を借りて行って腰掛けた。

寄宿舎から見るとは方角の違った学校の構内のさまがその窓の外にあった。一日は一日と変って行く秋の空がそこから見えた。

窓の日あたりを眺めていると、捨吉の心は田辺の小父さんの方へ行った。どうかして捨吉の気を引立てようとしている小父さんが「貴様も見よ」と言って案内してくれた秋の興行の芝居が眼に浮ぶ。暗い板敷の廊下がある。多勢の盛装した下町風の娘達が互に手を引きつれて往ったり来たりしている。芝居の出方でその間を通う男の挨拶するのを見ても、小父さんの顔の売れていることが知れる。廊下の暖簾の間から舞台の方の幕の動くのも見える。樽屋のおばさんの娘をそういう暖簾のかげに見つけるのは丁度汐水の中に海の魚を置くほど似合わしくもある。

二階のうずらにはまた狭い桟敷がある。樽屋のおばさんも覗きに来る。欄に倚りかかって見ている弘もある。そこへ小父さんの肥った身体が入ると皆膝と膝を突合せた。

「捨吉、あの向うが小父さんの領分だ」

と小父さんは舞台の正面に向った高い桟敷を指して見せて、土間にも幾桝か買って置いたところがある、そこは出方に貸付けてあるなぞと話し聞かせてくれた。