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きみつのみわく
機密の魅惑
大倉 燁子
「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,394 字 · 37 页
『有喜子が殺された翌朝は、もう書類の紛失したことが白石さんに発見されて、皆は有喜子が盗んだものと思って憤慨しているんです、彼女の悪口を聞くのは決して厭な心持ちではありません、私は内心痛快だったんです。ですから私は黙って見ていました。が、自分が盗み出したので、また誰かに盗み出されはしないかと心配で、心配でなりませんでした。私はなるべくこの部屋から離れないようにして、心の中で番をしていたのですが、それでも心配で毎夜人が寝静まるのを待って一応トランクの中を調べてみなければ眠れなかったのでございます。それをあなたにみつかったのです』
『死んだ有喜子に罪をなすりつけて喜んでいらしたあなたが、どうして今度はまた私まで招いて、書類を探し出させようとなすったの?』
『最初のうちは有喜子一人に疑いがかかっていましたから、見ても居られたんですの。あんな悪い女にはこの位の罰があたるのが当然だと思っていましたから、処が日が経つにつれ、あの夜の挙動に不審の点があったというので、遂々白石さんにまで疑いがかかってきましたのです。そして、あんなおとなしい善良な人に嫌疑がかかってはすまないと思う一方、見ていると白石さんは日に日に瘻れて、心の苦悶が顔にあらわれ、極度の神経衰弱に陥ってゆく様子にもう黙ってはいられなくなりました。