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きみつのみわく

機密の魅惑

大倉 燁子

「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,394 字 · 37 页

青空文庫

正々堂々と名乗りを上げて果し合うんでなくっちゃ面白くありませんですから、私はちゃんと予告をいたしますよ。まあ御安心なさいませ』と半分冗談のように云うのですが、そういう話をする時の有喜子の態度も真剣なら、真黒い眼が底光りがしてきて何とも云えず凄いのです。私は何となく薄気味が悪るくてなりません。もう会うまいと思って一度面会を避けたのです、すると私の心を直ぐ察して申しました。

『奥様は私に会うのが不愉快で避けたいと思っていらっしゃるのでございましょうが、それは大間違いです。大抵の奥様方というものは、御自分の御主人と関係でも出来た女は寄せつけまいとなさる。それがいけないんです。怪しいなと思召したらなお一層近づけるのでございますよ。大切にされ、心から親しまれ、可愛がられるといくら悪辣な女でも、そこは差控える気になって非道いことは出来なくなるものなんです。尤も私の場合は違います。私は敵を打とうと思って敵に附き纏っているんですから、しかし私を寄せつけないようになさろうとすると危険ですよ。予告が出来ないから不意打ちを食う恐れがあります。御要心、御要心』

私は有喜子が厭で厭で仕方がないのですが、どうも逃げるわけにまいりません。