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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

02 第二部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页

青空文庫

」

俊三はわかったような、わからないような眼をして、恭一を見た。恭一は今度は次郎に向かって、

「今度の母さん、そんなわけへだてなんかしないね、次郎ちゃん。」

「うん、……しないだろう、……きっと。」

次郎は、とぎれとぎれにそう言って、妙にくすぐったそうな顔をした。

三人は、それっきりまた默りこんで、めいめいに何か考えているらしかったが、俊三はそのうちに、つまらなそうな顔をして、ひとり階下におりていってしまった。

すると、間もなく、階段の下から、

「恭一や、ちょっとおいで。」

とお祖母さんの声がきこえた。恭一は、しばらく次郎の顔色をうかがってから、しぶしぶ立って行った。

次郎は一人になったが、べつにそれが気にもならず、また、何でお祖母さんが恭一を階下に呼んだのか、そんなことは考えてみる気もしなかった。彼はいつの間にか、また入学試験のことを思い出していたのである。

(あさっての晩までは、成績の発表はない。だが、母さんが来たら、きっといろいろ訊くにきまっている。それにどう答えたものだろう。いっそ、母さんと入れちがいに、正木に帰ってしまおうか知らん。)

彼はそんなことを考えて、小半時間もひとりで机に頬杖をついていた。