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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

02 第二部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页

青空文庫

しかし、恭一があまり永いこと帰って来ないので、そろそろそれが気になり出した。で、自分も階下におりてみようかと思ったが、思いきって立ち上る気にはなれなかった。階下に行けば、何かきっと気まずいことがあるにちがいない、と、思ったのである。

彼は、いらいらしながら、とうとう夕飯時まで、ぽつねんと一人で二階に坐っていた。

「ご飯だようっ、次郎ちゃん。」

階段の下から俊三にそう呼ばれて行ってみると、みんなはもうちゃぶ台の前に坐っていた。見ると、恭一は泣いたような顔をしており、お祖母さんは怒ったような顔をしていた。父はまだ帰ってきていないらしく、そのお膳には覆いがしてあった。

みんなむっつりして箸をうごかした。恭一はやっと一杯だけかきこむと、すぐ箸を置いて、二階に行った。次郎も間もなくそのあとについた。二人は、しかし、どちらからも口を利こうとしなかった。

「どうしたんかい。」

次郎がやっと口を切った。

「ううん、何でもないよ。」

それっきり二人は電燈もつけないで、默り込んで坐っていた。

七時過ぎになって俊亮が帰って来たが、飯をすますと、すぐ兄弟三人を座敷に呼んで、ごくあっさりと母を迎える話をした。