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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

02 第二部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页

青空文庫

「大巻のお祖父さんの絵の話は面白かったね。」

「うん。」

「あんな話、非常に僕たちのためになると思うよ。」

「うん。」

次郎には、正直のところ、話の意味がはっきりとわかっていなかった。しかし、恭一にそう言われると、何か自分に忠告でもされているような気がするのだった。恭一は独りごとのように、

「僕、教えてもらえるんなら、ほんとうに稽古をしてみようかなあ。」

「絵をかい? 大巻のお祖父さんに。」

「うん。町からだと近いんだから、僕、いつでもこれるよ。」

次郎はまた默りこんだ。恭一は、しかし、今度は少しもそれを気にしなかった。そしてしきりに、大巻のお祖父さんにもっと近づいてみたいような話をした。

別れ道に来ると、恭一は立ちどまってたずねた。

「こんどは、いつ来る?」

「わかんないや。」

恭一には、それがいかにも投げやった調子にきこえた。

「町に来るの、いやなんかい。」

「…………」

次郎は眼を伏せた。

「ねえ、次郎ちゃん――」

と恭一は次郎の肩に両手をかけて、

「負けちゃあ、つまんないよ。僕たち、大巻のお祖父さんが描いた蘭になるんだ。誰にだって負けるもんか。正しい人を憎む人があったら、その人が悪いさ。