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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

02 第二部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页

青空文庫

ひととおり必要な教科書や学用品を買ったあと、次郎は絵はがきがほしいと言い出した。すると俊亮は、いかにも無造作に、

「買いたいものがあったら、何でも今買っとくんだ。父さんは、めったにいっしょには来れんからな。」

次郎は、そう言われて、思わずじっと父の顔を見つめた。そして、

「ううん、絵はがきだけで、いいんです。」

と、十枚ほどの絵はがきを買うと、自分から先に立って書店を出た。何か、父の愛にあまえたくない気持だったのである。

書店を出て半丁ほど行ったころ、俊亮がふとたずねた。

「次郎は財布をもっているのか。」

「ううん。」

「じゃあ、一つ買ってあげよう。」

「僕、財布なんかいりません。」

「でも、もう中学生だから、買いたいものがすぐ自分で買えるように、いくらか小遣を持ってる方がいいんだ。」

次郎は答えないで、自分の足先ばかり見て歩いた。

小間物屋のまえに来ると、俊亮は默ってその中にはいった。次郎がその小さな飾窓のまえに立って待っていると、俊亮は間もなく、小さな蟇口を、ぱちんと音をさせながら出て来た。そして、それを次郎に渡しながら、

「一円ほど入れといたよ。なくなったら母さんにそう言えばいい。