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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页
だから、あたしは、罪ほろぼしに、孫だけでもしっかりさせたいと思うのだよ。それがあたしの仏様への……」
お祖母さんは、袖を眼にあてて泣き出した。俊亮は、恭一と俊三とが、まん前にきちんと坐って、いかにも心配そうに自分を見つめているのに気がつくと、さすがにたまらない気持になったが、あきらめたように大きく吐息をして、店の方に眼をそらした。
その瞬間、彼は、はっとした。一尺ほど開いたままになっていた襖のかげから、次郎の眼が、そっとこちらをのぞいていたのである。次郎の眼はすぐ襖のかげにかくれたが、たしかに涙のたまっている眼だった。
「次郎!」
俊亮は、ほとんど反射的に次郎を呼び、
「さあ、行くぞ。」
と、わざとらしく元気に立ち上った。そしてマントをひっかけながら、
「じゃあ、恭一、万年筆はせっかくお祖母さんに買っていただいたんだから、大事にしとくんだ。」
それから、お祖母さんの方を見、少し気まずそうに、
「お母さん、では、行ってまいります。」
お祖母さんは、まだ袖を眼に押しあてたまま、返事をしなかった。
「次郎ちゃん、今度はいつ来る?」
俊三は、重たそうに壜詰をさげて部屋にはいって来た次郎を見ると、すぐ立ってたずねた。