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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

02 第二部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页

青空文庫

」

だいだいそんなような意味に受取れた。そして最後に、

「以上、五年生を代表して、新入生諸君に希望を述べた次第である。」

と言って、その生徒は指揮台をおりた。次郎はそれで万事が終ったつもりになって、ほっとしていた。

ところが、それからあとが大変だった。そのつぎに指揮台の上にあらわれたのは、見るからに獰猛な山犬のような顔の生徒だった。そして、「貴様たちの眼付が、第一横着だ。」とか、「新入生のくせに、もう肩をいからしている奴がある。」とか、「講堂で五年生の方をぬすみ見ばかりしていたのは誰だ。出て来い。」とか、まるで酔っぱらいと気違いとをいっしょにしたような声でどなりはじめた。しかも、それを声援する役目を引きうけたのが地曳網の連中である。「そうだ!」――「その通りだ!」「引きずり出せ」――「ぶんなぐっちまえ!」

そうした声が、横からも、うしろからも、新入生たちの耳をつんざくように襲い、それがトタン屋根に反響して異様なうなりを立てた。

新入生たちの中には、もう誰も顔をあげている者がなかった。次郎は脊が低くて、しかも組の中では右側の前から十番目ぐらいのところにいたので、五年生に顔を見られる心配は比較的少かったが、それでもひとりでに頭が下っていた。