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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

02 第二部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页

青空文庫

一五 親爺

一五 親爺

雨天体操場事件は、翌日になると、もう全校生徒の噂の種になっていた。恭一の教室でも、始業前からその話でにぎやかだった。

「その新入生、ちびのくせに、いやに落ちついていたっていうじゃないか。」

「五年生の方が、かえって気味わるがっていたそうだよ。」

「まさか。」

「いや、ほんとうらしい。さんざんなぐられていながら、涙一滴こぼさないで、じろりとみんなを睨みかえして、悠々と帽子の塵をはらって出て行った様子は、ちょっと凄かったって言っていたぜ。」

「それよりか、狐の奴がその新入生に頬ぺたをひっかかれたって、ほんとうかね。」

「それはたしかだ。」

「何でも最初になぐったのは狐だそうだが、なぐったと思った時には、もう頬ぺたをひっかかれていたそうだ。」

「その新入生、よっぽどすばしこい奴だな。」

「狐もさすがに面喰ったろう。」

「少々てれているらしいよ。」

「いい気味だ。あいつも、たまにはそんな目にあう方がいいだろう。」

「しかし、今年の五年生もそれで台なしだな。しょっぱなから、しかも新入生に対して味噌をつけたんでは。」

「少々気の毒になってくるね。」

「しかし、頭の悪い奴ばかりそろっているんだから、それがあたりまえだろう。