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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页
次郎はただ頭がもやもやしていた。父にどう返事をしてもらいたいのか、それさえ自分でもわからなかった。第二の母、そんなことは、まだこれまでに彼が考えてみようとしたことさえなかったことなのである。
「とにかく、会ってやって下さるぶんには、差支えございませんでしょうね。」
お祖母さんの声である。次郎は固唾をのんだ。
「ええ、それはかまいません。どうせ今日は、おそくなれば夜になる肚であがったんですから。」
次郎は、失望に似た感じと、好奇心に似た感じとを、同時に味わった。
「次郎ちゃん、――何してんだい。――餅が焼けたよう――。」
誠吉が土間の方から呼んでいる声がきこえた。彼は、はっとして、急いで部屋を出た。
蝋小屋に行ってみると、もう餅がふくらんで、熱い息を吹き出していた。蓆のうえには、醤油と黒砂糖を容れた皿が二つ置かれていた。しかし、彼には、もうほとんど食慾がなかった。彼は、蒸炉にもえさかっている火の勢いで、自分の頭がぐるぐる回転しているような感じだった。
間もなくお延が、彼らを午飯に呼びに来た。
次郎は、しかし、ちゃぶ台のまえに坐っても、お延が盆をもって座敷に往ったり来たりするのに気をとられて、たった一杯しかたべなかった。