轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
05 第五部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 页
」
「まあ、そんなものだ。」
「何だか、あいまいですね。」
「私は、子供のころ、父が転任ばかりして、ほうぼううろついていたものだから、実は、郷土というほどの郷土を持たないんだ。今のところ、しいて郷土を求めるとすれば、この塾の近所がそうかな。」
「じゃあ、ここいらの民謡でも。」
「そいつは無理だ。ここに落ちついてから、まだながくならんのでね。それに、第一、こんなに東京に近いところでは、民謡なんか、残っているはずがないよ。」
「今度は小母さんの番だ。お願いしまあす。」
だれかが夫人のほうに鋒先を向けた。
「あたしも郷土芸術はだめ。」
「何でもいいんです。」
すると、すみのほうから、
「猫の鳴き声。」
と、小声で言ったものがあった。笑いがまた爆発した。朝倉夫人も笑いながら、
「猫の鳴き声なんか、陰気じゃありません? それよりか、ここには友愛塾音頭というのがありますから、あたしそれをご披露しますわ。」
一せいに拍手がおこった。夫人は、
「では、本田さん。」
と、次郎に目くばせした。次郎は自分のそばにおいていたガリ版刷りを塾生たちに渡した。それには音頭の歌詞が印刷してあったのである。