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しょうごのさつじん

正午の殺人

坂口 安吾

「小説新潮 第七巻第一〇号」1953(昭和28)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,888 字 · 28 页

青空文庫

書生の木曾は台所の前でマキ割りをしていた。アケミは家の中へはいる前にマキ割りの音をたどって木曾のところへやってきて、

「安川さんは?」

「さア?」

「まだお帰りにならないのかしら?」

「僕はズッとここでマキ割りしてたもんで、家の中のことは知らないのですが……」

なるほど相当量のマキが割られて散らばっていた。

アケミは屋内に入り、思いきって居間の扉をノックしてみた。屋内一面に死んだように音がないので、イヤな予感がしていたのだが、意外にも居間の中から久子の澄んだ返事がきこえた。

「はい。どうぞ」

「アラ。安川さん、お一人?」

「ええ」

「先生は?」

「どうなさったんでしょうか。今までお待ちしてたんですけど……」

「原稿書いてらッしゃるのかしら?」

「さア? 私まだお目にかかっていないんですの」

「さっきから?」

「ええ」

久子はその一時間持参の本を読んで待ちくたびれていたのだそうだ。なるほど居間の内部はアケミが彼女を招じ入れた時と全く変りがなかった。

そこでアケミは寝室へ行ってみた。そしてそこに全裸の姿で俯伏せに死んでいる神田を見出したのである。バスタオルが下半身を覆うている。