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すいちゅうのきゅうでん
水中の宮殿
野村 胡堂
「少女倶楽部」1934(昭和9)年6月〜8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,533 字 · 52 页
「それがどうしたの燿子さん」
「おかしな事があるの、綾子さんの鞄を覗いたり、ハンドバッグを調べたり」
「まア」
「お兄様は呑気だから、そんな事を少しも知らずに、水泳の話なんかしかけられると、夢中なんですもの」
「どうしましょう、怖いわ、私」
「大丈夫よ、私に任せてらっしゃい、――もう仙台でしょう」
「ええ」
列車は間もなく仙台の停車場に着きました。停車時間は十分、物売の声や、乗降の客にしばらく賑わいましたが、やがて発車用意のベルが鳴ると、プラットホームに降りていた客は、先を争って車の中に帰ります。
「さア、降りましょう、お兄様」
燿子は不意に網棚から荷物を取りおろしました。
「平泉はまだだぜ、燿ちゃん」
「でもここで降りて大事な大事な秘密の用事をかたづける筈だったわ、お兄様は忘れてらっしゃるのよ、ね綾子さん」
「…………」
「待て待て二人で勝手に降りちゃ困るな」
健一は大あわてにあわてて、両手に鞄を下げると、動き出しかけた二等車から飛降りました。
「おや?」
後に残されたハイカラ青年の驚きは見物です。これも大急ぎで手廻りの荷物を纏めると、帽子を阿弥陀にかぶって、靴をブラ下げて、鞄を抱えて、