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すいちゅうのきゅうでん
水中の宮殿
野村 胡堂
「少女倶楽部」1934(昭和9)年6月〜8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,533 字 · 52 页
人の足跡と――銅板の絵図面
「た、大変」
「どうしたのお兄様」
「み、水を一杯」
綾子が汲んで出すコップを一息に呑み干すと、
「高館の跡の河床の崖になったところに鼠の穴のような横穴があったんだ。念の為に鶴嘴で二つ三つ叩くと、ポコリと大穴が開いたんだ」
「えッ」
「覗いて見ると立派な隧道だよ。中は石で畳み上げてある。宝庫の入口かも知れないと思ったから、大急ぎに穴を塞いで帰って来たんだ。何しろ、四方は見通しだし、この明るさだろう」
健一が驚いたのも全く無理はありません。
「お兄様、行って見ましょうか」
「待て待てどうせ人夫は一人もいないから、そっとしておけば、誰も気がつく筈はない。晩まであのままにして、暗くなったら出かけよう」
今度ばかりは健一の方が利口でした。
人の足跡と――銅板の絵図面
その晩九時頃、健一と燿子と綾子は、北極探検ほどの用意を整えて、高館の下の河床に降りて行きました。
「お兄様、悪い道ね。――それに月はないし」
燿子と綾子は、何べんか転げました。堤防を築いて、無理に水を乾した川の中を歩くのですから、大小の岩石が邪魔をして、なかなか思うように進みません。
「懐中電灯を灯けようか」
「そんな事をしたら、どこまでも見えるじゃありませんか」