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すいちゅうのきゅうでん
水中の宮殿
野村 胡堂
「少女倶楽部」1934(昭和9)年6月〜8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,533 字 · 52 页
燿子にたしなめられながら、それでもどうやらこうやら、昼のうちに見定めておいた穴の入口までたどり着きました。
「ここだ。少し待て、入れるようにするから」
健一は石の間へ隠しておいた鶴嘴を持出すと、力任せに叩き込みました。
二打、三打、穴は次第に拡がって、少しこごみさえすれば楽に入れるほどの入口が闇の中に開きました。
「さア入るぞ、有毒ガスがあるかも知れないから、穴の中へ入ったら蝋燭を灯けよう」
健一はこんな事には慣れておりました。持って来た二メートルほどの棒の先へ蝋燭を灯けた。それを前へ突出すようにして進むのです。
道は少しずつ、爪先下りになっていますが、隧道は泥磐岩をくり抜いたもので、思いの外安全な上、足の下は、水垢こそ溜っておりますが、八百年前に造ったままの見事な石畳、なんの不安もありません。
石畳を敷いたのはたった一筋で、それを辿って行くと、今度は少しずつ上りになって、やがて十メートル四方ほどの広間になりました。
「おや?」
燿子は頓狂な声をあげます。
「どうしたの燿ちゃん」
「人の足跡よ」
「えッ」
懐中電灯が二つに蝋燭が一つ、粗末と言っても、かなり手際よく敷いた石畳の上には、場所によっては三糎も四糎も水垢が溜っておりますが、その上に二つ三つ五つ――いや、もっともっと沢山、紛れもない人間の足跡がはっきり印さ