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すいちゅうのかいじん
水中の怪人
山本 周五郎
「少年少女譚海」博文館、1939(昭和14)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,922 字 · 18 页
彼はふっと眼をあけたが、
「ああ助けて下さい※(感嘆符二つ、1-8-75)」と恐ろしそうに叫んだ。
「啓吉君はお帰しします。助けて下さい、殺さないで下さい。僕をゆるして下さい」
「云いたまえ、啓吉君はどこにいる」
「正直に云います。月島西仲通りにある僕の家にいます。本当です。どうか助けて」
文吾は津川の体を突きはなして、
「ランチを隅田川へまわしてくれ」と命じた。
一週間のちの或る朝。
鹿島家の洋館の露台で、社長はじめ敬吉兄妹、文吾などを前にして、津川重造はすっかり落ちついた静かな調子で話していた。
「――もうお分りでしょうが、あれは僕の発明した『自由潜水服』です。
ご承知のように、潜水服というものは、つい最近までは原始的なものでした。厚い服、大きな重い兜、鉛の靴、鉛のおもり、そのうえ空気パイプが船とつながれて、活動は一定の範囲と深さに限られていました。――それを改造したのが独逸のリュベッカーとドーラゲルエルクです。この二人がつくった潜水服は、呼吸に必要なガスを圧搾してタンクにつめ、両側の背嚢に備えつけておいて、自働的にこのガスを混合しながら呼吸できるようにしました。