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どろぼうとわかとの
泥棒と若殿
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1949(昭和24)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,601 字 · 41 页
そのため国もとへ長の蟄居を申しつけるものである。
成信はいちど父に会いたいと云ったが、かれらは耳にもいれなかったし、中屋敷にいる生母と別れをつげるひまもなく、すぐさま領地へ送られてしまった。――この鬼塚山の御殿というのはまえの領主の山荘だったそうで、松平家が移封して来てから、成信の祖父にあたる大炊頭成光というひとが、暫らく隠居所に使ったことがある。それもごく短かい期間のことで、あまりに荒れているし、城と五里も離れていて不便なため間もなくやめたらしい。それからのちは番人も置かず、荒廃するままにしてあったというが、……国もとへ着くとすぐ成信はここへ入れられたのであった。
初めのうちは侍五人と、下僕が数人ついていた。そのうちに侍が一人ずつ減ってゆき、下僕も去り、今年の春から成信ひとりだけとり残された。しかし米だけはどうにか届いていたのだが、それもだんだん間遠になり、ついには米も来なくなった。――城からはときどきようすを視に来るし、この屋敷まわりには妙な人間がつねにうろうろしている、三度ばかり成信を刺しに忍びこんだ者もあった。ごく最近も表の門番所のかげから、広縁にいる彼に矢を射かけたことがある。