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どろぼうとわかとの
泥棒と若殿
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1949(昭和24)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,601 字 · 41 页
九
「――おれは、躯は丈夫だよ」
「自分じあそのつもりだろうがそうじあねえ、おめえの躯は病んでる、病気てえものじあねえかもしれねえが」
伝九郎はきまじめな顔でこちらを見た。
「そうよ、躯か心んなかかわからねえが、とにかくどこか相当いたんでる、おらあこれでそういう勘はわりかた慥かなんだ」
「――ほう、そんなふうにみえるかな」
「心配するこたあねえんだぜ、信さん、おれがついてるからな、大船……ってえわけにあいかねえが、おれにできるだけのこたあするつもりだ、まあいいから、当分おめえは暢気にしていねえ」
九
成信は本気であった。伝九郎といっしょにここを出奔し、どこでもいい、この身で働いて、人間らしい慎ましい生活をしよう。伝九郎を騙し、搾り、くすね、罵しり辱しめたような人間はどこにでもいるに違いない。しかしそれもさして悪くはない、権力争奪の傀儡にされるより、はるかに人間らしく、生き甲斐もありそうだ。
――出てゆこう、伝九郎といっしょに、自分で働いて生きよう。
成信がそう決心するのと反対に、伝九郎はなかなか動くけしきがなかった。堤防工事の人足の親方がだいぶ彼に執心で、その頃はもう小頭にひきあげていた。