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どろぼうとわかとの
泥棒と若殿
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1949(昭和24)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,601 字 · 41 页
「――また会おう、伝九、人間にはそれぞれの道がある、おれはおれの道をゆくんだ、達者でいて呉れ、さらばだ」
成信は思いきって、大股にぐんぐん歩きだした。
「それじあ、いっちまうんだな、信さん」伝九郎の声がうしろから追って来た、「おらあもうとめねえよ、――どうかりっぱに出世して呉んな、……祈ってるからな、病まねえようにして、――いつか、もしできたら、会いに来て呉んな、信さん、おらあ待ってるぜ」
歯をくいしばり、耳をふさぐおもいで、成信はずんずん門の外へ出た。するとそこに誰かいてつくばった。
「お供をつかまつります」
鮫島平馬である、成信は頷ずいて、そのまま道を下っていった。
まだ西風が強く、夜空はちりばめたような星であった。
――信さん、いっちまうのか信さん。
成信の耳には伝九郎のかなしい声がいつまでも聞えていた。